山猫日記

三浦瑠麗 山猫総研

北海道新聞に寄稿しました。

北海道新聞の10月24日付朝刊、各自核論の欄に寄稿させていただきました。 以下、記事本文を転載します。 「積極的平和主義」を考える 自民党の政権復帰から約2年、安倍内閣は積極的平和主義を掲げて活発な外交を展開してきた。アフリカ、南米、南アジアなど…

ノーベル平和賞受賞スピーチ(草稿)

憲法9条及びそれを守ってきた日本国民が、ノーベル平和賞を受賞する可能性について報じられています。改めて、北欧の小国が勝手に決定する賞に日本ではこれだけ注目が集まることに感心します。とは言え、ネット空間でにぎわっている誰が授賞式に行くのか、そ…

非正規雇用と日本の民主主義

非正規という形で働く方の割合が継続して高まっています。統計によって多少の差があるようですが、80年代の後半から実数で2.5倍増加し、足もとでは既に労働者の約4割に相当します。非正規労働のすべてが一概に悪ということではないでしょうが、本日は非正規…

消費増税反対キャンペーンについて

新内閣にとって、消費増税の判断は今年の秋以降の政治の流れを占う重要なイベントとなりそうです。増税合意の当事者だった谷垣幹事長の任命や最近の閣僚の発言を見る限り、予定通り増税することが政権の既定路線と思われます。増税判断も、そのための景気動…

地方創生とは何か?

第二次安倍改造内閣が発足しました。総理や主要閣僚の会見を通じて伝わってくるメッセージは「地方創生」が重要テーマとなるということです。自民党が政権に復帰して後のアベノミクスの恩恵を全国に広げるというのが目的ということですので、時宜を得た課題…

戦後69周年「識者評論」より転載(共同通信社への寄稿)

終戦記念日特集で、共同通信社に評論を寄稿いたしました。 8月13-15日にかけて各地方紙に載った内容のオリジナル版を以下に転載します。 「死者を悼む」 本日8月15日は、お盆であり、終戦の日として、二重の意味で祈りの日である。今年は、その日を安全保障…

ガザにおける紛争について

ガザでの紛争に出口が見えない。何度かの停戦を挟んで交渉は行われているようですが、停戦合意の継続さえままならないようです。積み重なった怨恨と利害関係の複雑さにフラストレーションばかりが募り、平和という言葉が、もはや空疎にさえ聞こえてしまうほ…

韓国について考えたこと

本日は韓国について考えたいと思います。先般、中国の習近平国家主席が韓国を訪問しました。日本における報道のトーンは、強力に演出された中韓の蜜月ぶりの真偽を問いつつ、歴史問題で反日共闘姿勢への警戒が語られるというところだったように思います。北…

集団的自衛権(2) – 闘え左翼、ただし正しい戦場で

7月1日、集団的自衛権が現行憲法の解釈として認められるという趣旨の閣議決定がなされました。関連する法整備はこれからですし、その後も、安全保障の現場で日々行われる意思決定や行動規範がただちに変化するわけではないでしょう。安全保障の世界の常識…

政権の偉業と開かれた保守―外交政策

政権の偉業とは何かについて考えるシリーズ第三弾、「開かれた保守」をキーワードに今日は外交政策について考えたいと思います。前回からだいぶ時間があいてしまったのでこれまでの議論をおさらいします。第一弾では、安倍政権では、実は経済改革がどんどん…

集団的自衛権論争の本質

集団的自衛権をめぐる論争がどんどん盛り上がってきています。本稿でも他のテーマを論じる中でこの論点にも触れてきたつもりですが、最近、「で、三浦さんはどうなのよ」的なプレッシャーをいただくようになりました。泥仕合の感が高まっている論戦を眺めつ…

共同通信社/加盟49社の論説研究会で講演しました

一昨日(5月26日)、共同通信社と加盟新聞社計49社の論説担当責任者の論説研究会(於共同通信社本社)で、「『シビリアンの戦争』と『共和国による平和』」と題して招聘講演を行わせていただきました。 冷戦終結後この方、世界大での民主化が進展し、また権…

政権の歴史的偉業とは何か

GWで少し時間が空いてしまいましたが、前回のエントリーでは、安倍政権において進んでいる経済改革について一歩引いた立場からの評価を試みました。そして、確定的な評価には時期尚早との留保はありつつ、圧倒的な政権基盤や同政権の保守的なイデオロギー故…

第三の矢 ー 安倍政権の経済改革の歴史的位置づけ

安倍内閣の経済政策が大きく動いているようです。しかし、それは多くの方の実感には反するかもしれません。安倍内閣がこれまで進めてきた最重要の政策は、もちろんデフレ脱却を目指して行われてきた金融政策です。国内外を問わず、経済誌や専門家の論調は、…

Gゼロの世界を生きるー米オバマ大統領のアジア訪問に思うこと

ウクライナ情勢の深刻化をきっかけとして、米国のリーダーシップの限界を指摘する、いわゆるGゼロ論が活発になっています。米国の相対的な地位の交代は金融危機をきっかけに加速し、オバマ政権の内政志向によって加速されていることですので、今に始まったこ…

ロシアのG8追放は禍根を残す

ウクライナ情勢をめぐる国際社会の緊張がエスカレートしています。エスカレートという言葉自体、冷戦中に頻繁に登場した言葉で、現代にはいかにも合わないものですが、残念ながら現在の状況を言い当てる言葉になってしまいました。クリミアでの住民投票、同…

ウクライナ情勢について

ロシアのウクライナの内乱に際してのクリミア介入が争議を呼んでいます。欧米メディアの論調は、「新冷戦」を予測する者から、以来の地政学的なショックというものまで、冷静な分析とそうでもないものが入り混じっています。日本の論調は、事実関係について…

維新ムーブメントの盛り上がりと、失速と、再盛り上がり?について

日本維新の会の政策実現が曲がり角に来ています。維新ムーブメントの生誕地である大阪では、看板政策である大阪都構想が他政党の積極的及び消極的反対にあって停滞しているため出直し選挙が計画されています。他主要政党から有力な候補者が出てきそうにない…

共和主義者のジェンダー論

安倍政権は女性活用を重視しているようです。「第三の矢」の成長戦略への注目が高まる中で、「三年間抱っこし放題」のキャッチフレーズとともに有名になった育児休業の延長や、5年間で待機児童をゼロとすることなどが目玉であり、ダボス会議では指導的立場に…

野党再編(2)

前回のエントリーでは、今後数年の日本政治の重要テーマである野党再編について、地方までを含んだ保守系二大政党制が確立するかどうかがポイントであると申し上げました。それでは、日本全国保守一色になってしまうのではないかという懸念をもたれる方がい…

野党再編(1)

野党再編は今後数年の日本政治のホットトピックとなるはずです。衆参で自民党が圧倒的な優位にあるからこそ、野党はそこにエネルギーを注がざるをえません。いったん政権交代を経験してしまった以上、かつての社会党のように万年野党であることを受け入れつ…

地方経営における共感と想像力―日本維新の会が回帰すべき方向

先日の日経新聞に、日本の特に地方部の人口動態について興味深い記事がありました。現在のトレンドで推移すると日本の多くの地方は人口がどんどん減っていき、共同体として存立し続けることが難しくなるという、とても深刻な内容でした。株価、為替、成長率…

日米同盟と沖縄(下)

前回のエントリーで、米国はやがて東アジアでの権益維持や、日本防衛のコミットメントから徐々に撤退していくであろうとお話ししました。それは、米国の民主主義が必然的に到達する結論であって、良い悪いの問題ではありません。米国は、別に東アジアや日本…

日米同盟と沖縄(中)

民主主義国間の同盟関係は、同盟を維持しようとする国民の意思に依存します。前回のエントリーで、やがて「米国の撤退」が始まると申し上げましたが、その理由もこの点から派生しています。勢力均衡の時代の同盟政策はプロ同士の取り決めでした。同盟管理の…

日米同盟と沖縄(上)

沖縄の基地問題の行方が揺れています。安倍政権は、民主党から政権を奪還して以後、普天間基地の辺野古沖移設を用意周到に進めてきました。石破幹事長がにらみを効かせる会見において沖縄選出の議員が容認姿勢を明らかとし、年末には知事も容認の立場を表明…

日本の右傾化?(2)―籾井NHK会長発言、安倍総理ダボス会見など

前回のエントリーで、盛んに喧伝される「日本の右傾化」の本質は、戦後のリベラル系メディアが社会的な踏絵を迫ってきたことに対する、反左派的な気分であると申し上げました。加えて、実際の政策において日本の戦後リベラリズムは、国民の幅広いコンセンサ…

日本の右傾化?

新聞の論調を見る限り今回の都知事選は、細川元総理と舛添元厚労相を軸に展開されるようですが、今回の選挙の一つの特徴は、イデオロギー的に両候補よりそれぞれ左と右にわかりやすい候補がいることです。宇都宮氏は、日弁連の会長も努められた人権や環境に…

東京都知事選(2)―東京と地方の未来

東京都知事選の候補者が出揃い、おぼろげながら選挙の争点も見えてきました。小泉元総理の支援を受けた細川元総理が原発の即時停止を訴える中、舛添元厚労相は、原発問題の争点化を避けつつ、自公与党を代表して五輪準備、高齢化問題等をバランスよく訴える…

東京都知事選―正しい選択肢と安易な選択肢

東京都知事選において問われていることは何でしょうか?これは単純なようでいて、実は奥深い問題かもしれない。もちろん、定義から言えば、東京都の知事にふさわしい人物を選ぶことであり、日本最大の予算規模を誇る自治体を動かし、ある意味、日本最大の諸…

弱者認識の奪い合い(2)―総理の靖国参拝に考える

前回、総理の靖国神社参拝には、戦後長らく「弱者」の地位にとどめ置かれたと認識してきた保守層による、国内の敵に対する自己主張という側面があるのではないかと申し上げました。今回は、保守層が弱者認識を形成するに至った歴史的経緯を振り返りつつ、現…