山猫日記

三浦瑠麗 山猫総研

トランプ現象解題ースーパーチューズデー決戦前夜

決戦前夜 米国大統領選は決戦を迎えようとしています。これまで、民主・共和両党の候補者を決めるために4つの州で予備選挙が行われました。民主党はヒラリー・クリントン候補、共和党はドナルド・トランプ候補がそれぞれ3勝しています。現地時間の3月1日(火…

メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題

日本における言論の自由に対する懸念が強まっています。実際に、言論の自由やそれを支える報道の自由がより不自由になっているのかについては諸説あるでしょう。国会でも論戦になっています。国際的なランキングが万能とは思いませんが、国境なき記者団が発…

難民問題の教訓

2015年は世界中のメディアが難民とテロのニュースで溢れた年でした。この二つのキーワードには深い関係があります。テロも難民も、横暴な政府や統治の崩壊といった国内の病弊から生まれ、周辺国の安定や安全に影響を及ぼします。テロは国家ほど強くない集団…

米大統領選のニューハンプシャー州予備選を終えて

アイオワ州の党員集会に続き、はじめての予備選がニューハンプシャー州で行われました。民主党の勝者はバーニー・サンダース氏、共和党の勝者はドナルド・トランプ氏です。両党の勝者に共通するのは、もっとも主流派から遠いところにいると自らを位置づけて…

慰安婦問題の日韓政府合意を受けて

老練な外交成果 日韓が慰安婦問題について合意に至りました。先の首脳会談で、「年内解決」がぶち上げられて以来、日韓合意が近づいている旨のリークが続いていましたから、まったく意外であるというわけではありません。私自身は双方の国内政治上、受け入れ…

大阪W選挙の結果を受けて

ポピュリズムの勝利 大阪の府知事選、市長選は、おおさか維新の会の二候補の圧勝でした。多くのメディアが強調した低投票率の下での圧勝ですから、大阪維新の会に対する根強い支持があると解釈すべきでしょう。維新からすれば、5月の住民投票に敗れ、創業者…

パリ同時多発テロを受けて

悲劇とは我々の姿を映す鏡 パリの同時多発テロから数日が過ぎ、ようやく事態の全体像が見えてきました。当初の混乱の中では、首謀者が誰であったかも、全員が拘束されたのかもはっきりせず、追加的な攻撃の恐怖も持続していました。フランス当局は、ISの犯行…

日中韓首脳会談と東アジアの未来(2)

朝鮮半島は日本外交の大きな試練 東アジアの未来について、楽観論と悲観論が同居する世界となるのではないかと申し上げました。つまり、楽観論と悲観論の論拠となる事態が別個に進行しているということであり、今後数年の些細な時代の成り行きによって、どち…

日中韓首脳会談と東アジアの未来(1)

悲観論と楽観論が共存する東アジア 我々は時代の転換点に立っています。東アジアの未来には楽観論と悲観論が並び立って存在しているからです。楽観論の核心には経済の相互依存が深まっていく姿があります。関係国間に共通の利害の基盤が育っていき、相互利益…

米大統領選の構図はヒラリー対ルビオ

戦いの構図はヒラリー vs ルビオ 米国の大統領選挙が新しい局面を迎えています。本選挙は2016年11月ですから、まだまだ1年以上続くわけで、今後も様々なドラマがあるでしょうが、民主・共和両党において一定の構図が見えてきたということです。 まず、民主党…

習近平国家主席の訪米と米中関係の行方

中国の習近平氏が国家主席として初めて公式に訪米しています。オバマ政権の過去6年強のあいだ、米中関係はおおむね安定しており、特に、首脳会談ということでいくと蜜月の演出が目立っていました。今回の訪問では、多少、温度感が異なるようです。世界の趨勢…

安保法制ーー何が選択されたのか

安保法案が参議院で可決され、成立しました。戦後の安全保障政策にとって大きな転換の日であり、日本政治全体にとって大きな転換の日であったのだと思います。国会内で見られた歌舞伎的な物理的抵抗も、国会外で繰り広げられた現代日本にしては粘り強いデモ…

維新分裂と安保法制をつなぐもの

日本政治が動いています。安保法制をめぐる議論がいよいよ佳境に入り、参議院での採決の日取りも取りざたされ、野党提出の対案の審議や60日ルールの適用をめぐる鞘当てが活発化しています。国会内で少数の立場にある野党勢力は、国民世論を喚起すべく、街頭…

戦後70年の総理談話に想う

争われたのは「歴史」ではなく「政治」 第二次世界大戦の終結と日本の敗戦から本日で70年を迎えます。歴史書に記述され、祖母から伝え聞いたことからすると、70年前の8月15日も、とても暑い日だったそうです。今日も、まだ昼前だというのに庭の蝉が力の限り…

NewsPicks連載記事のお知らせ

しばらくブログでの記事のお知らせが途絶えておりましたが、紙やオンライン媒体に書いた文章について余裕のある時にはSNSだけでなくなるべくブログでもお知らせしようと思っております。 NewsPicksというニュースのキュレーション/コメントの媒体に6月から…

安保法制(6)―安保法制の政治的意味合い

政権基盤への影響 安保法制をめぐる議論の政治性が高まっています。安倍政権の支持率が低下する中で、安保法制をきっかけとする政局論を展開する識者も出てきました。総裁選を控える自民党内での発言や、総理の祖父である岸信介元総理が安保改定と刺し違えて…

安保法制(5)―パーセプション・ゲームの功罪

象徴性をめぐるパーセプション・ゲーム 維新が国会に安保法制の対案を提出しました。政府提出の安保法制が、重要法案の審議時間の目安とされる80時間を越え、与党からは採決に向け機が熟してきているという発言が出始めていた中でのことです。本日は、維新の…

安保法制(4)―不思議の国の潮目を読む

不思議の国 潮目が変わった、という意見が増えているようです。憲法審査会の場で与党推薦の参考人を含む三人の憲法学者が安保法制について違憲との見解を示したことがきっかけです。左派勢力からは違憲論が、与党内からは不手際論が、メディアから思惑含みの…

安保法制について(3)―国会で議論されるべきこと

建前と誤魔化しを廃した安保論議 安保法制の国会論議が始まります。先般の党首討論を見る限り、日本が直面する安全保障環境をどのように捉え、それにどのように対処していくべきかという根本において与野党間の認識が食い違っているようです。戦後日本の大き…

大阪都構想アフターノート:住民投票の否決を振り返る

僅差で否決された理由は 大阪都構想の住民投票が僅差で否決されました。賛成と反対の票差は、投票総数の1%以内という大接戦でした。敗北を受け、橋下大阪市長は年末の任期満了をもって政界を引退する旨表明し、合わせて維新の党の江田代表も辞任を表明しまし…

5.17大阪都構想の住民投票について

大阪都構想の住民投票が直前に迫っています。もとより、多様な論点を含むテーマですが、本日はこの点について考えてみたいと思います。本件については、様々な識者がそれぞれの立場と思惑から発言をしています。私は、「政策論としての都構想」と「政治論と…

安保法制について(2)―国際平和共同対処事態

前回は、安保法制の諸論点のうち、日本の防衛に直接かかわる点について取り上げました。日本の防衛を確実なものとし、抑止力を維持するための現実的な選択肢としては、日米同盟の信頼性を高める以外にはありません。そのためには、技術的にも、政治的にも集…

安保法制について(1)

歴史的な政策変更 安倍総理は米国上下両院での演説で、夏までに安保法制を整備するとしました。安保法制は事実上の国際公約となったわけですから、ゴールデンウィーク明けの国会は荒れ模様となるでしょう。本日は、そんな安全保障法制について取り上げたいと…

総理の米国上下両院での演説について

安倍総理が日本人の総理大臣として始めて米国上下両院で演説を行いました。本日は、歴史的な演説に対する評価を試みたいと思います。はじめに、前提として申し上げたいことは、この種の演説は国際政治や外交を考える上ではとても重要だということです。 国際…

自民党の憲法改正草案について

本日は憲法改正について取り上げたいと思います。言うまでもなく、憲法をめぐる問題は、戦後日本の政治対立を象徴する論点です。改憲、護憲、加憲、創憲などの政治的立場に色分けされた戦後日本ほど、憲法が政治対立の中心にあって国民を分断し続けてきた国…

日米同盟と抑止力―辺野古問題によせて

沖縄における基地問題が袋小路に入り込んでしまっています。世界一危険とされ、20年来の課題である普天間飛行場移設の選択肢は辺野古以外にはないとする政府と、あたらしい基地を沖縄に作らせないという公約で当選した知事が真っ向から対立しているのです。…

政治家と官僚と軍人(2)

文官統制について、前回は政軍関係の側面、政官関係の側面、そして背広組と制服組との組織内権力関係の側面からそれぞれ取り上げました。今回、検討されている組織変更については、政軍関係や組織内権力関係の観点からは求められる改革の方向性であろうと思…

政治家と官僚と軍人

安全保障法制の議論が活発化してきています。昨年夏の閣議決定を踏まえ、安全保障に関する法的枠組みを整備する中で多様な論点が浮上し、国会や与党協議が続いています。中東やウクライナ情勢の混乱に加え、東アジアの安全保障環境の不透明感が高まる中で、…

戦後70年の総理談話と歴史認識―文藝春秋SPECIAL2015年春号に寄稿しました

戦後70年の総理談話について、それから歴史認識について思うところを2月26日発売の『文藝春秋SPECIAL』に寄稿しました。総力戦に敗けたことの意味について、攻撃的戦争の概念を採用すべきことについてなど、いくつかの重要な点を盛り込んであります。すでに…

攻める農政の先にあるビジョン

前回は、現在進められようとしている農協改革の意義について申し上げました。今般の改革は、それ自体のインパクトを評価しても本質を捉えられるものではなく、農協改革を通じてより大きな農政の変化を可能とするところに意味があったと。当然沸いてくる疑問…