山猫日記

国際政治学者、三浦瑠麗のブログです

民主党代表選に寄せて―何が選択されようとしているのか

 民主党代表選が佳境を迎えています。本来であれば、野党第一党の党首として次に総理となるかもしれないリーダーを決めるという緊張感に包まれていなければいけません。民主党現有議席数の現実を考えると、実際には、そのようなことを言っても始まらないのですが、それでも、野党再編をにらんで日本の政治の未来に少なからぬ影響を持つであろうことは間違いないでしょう。改めて、民主党代表選の意義を考えたいと思います。

 そもそもの民主党の存在意義は、まず第一に、日本の有権者の2~3割を占める、リベラルな価値観を信奉する有権者の受け皿としてのそれです。いわゆるリベラル系の政党には、共産党社民党もありますが、特に組合票の受け皿として、民主党がこの層の支持を集める中心的存在であり続ける可能性は高いでしょう。しかし、小選挙区という制度の特性や、一票の格差の問題を考え合わせると、リベラル票/組合票の支持に基づく獲得可能議席はせいぜい衆議院で100議席前後です。その意味で、民主党衆議院での73の現有議席は、野党の分裂によって自民党を利している部分があり、実力以下の議席であると考えていいと思います。

 しかし、それは民主党がリベラル票と組合票を代表する存在である限り、民主主義の数の現実においてはそれ以上の存在とはならないということでもあります。実際に、2009年の政権交代選挙において300議席を獲得した民主党も、それまでは、せいぜい130議席前後しか獲得できていませんでした。自由党を吸収して保守層に支持を広げてはじめて180前後の議席を獲得できるようになったのです。

 だからこそ、今後の民主党が進むべき路線を選択する代表選に意味があるわけです。

 岡田元代表が掲げておられる路線は、簡単に言えば、民主党をリベラル票と組合票の受け皿として本来どおりの実力を発揮できるところまで再生しようということです。政策的には多少すっきりするでしょうが、仮に、自民党に敵失があったとしてもせいぜい150議席程度を目指すという路線です。であるからには、現実的には、連立政権を想定しない限りはかつての社会党のような批判勢力、牽制勢力としての意味しか持ち得ません。

 岡田路線で、再び単独の政権交代を目指すことには殆どリアリティーがないわけですが、この現実を受け入れて、連立戦略をとり、政権の一角を占める存在として存在感を発揮するという道は、実はなかなか面白いかもしれません。

 維新との連立を想定すると、維新が掲げる踏み込んだ地方分権や規制改革を飲み込む代りに、社会保障などの分野でリベラル色の強い政策を実現できるでしょう。反対に、自民党と大連立する場合には、社会保障や税制の改革から党派性を取り除き、この国に必要な改革を前に進めることも可能です。寄り合い所帯の不決断が民主党の悪しき伝統なので、実現可能性は低いだろうけれど、日本政治において再び意味のある存在となるチャンスはあります。

 長妻元厚労大臣の路線も、大枠では岡田氏と共通と思われます。もちろん、発しているメッセージにリベラル色がより強い分だけ、連立などを通じて政権に参加するなどの現実路線はさらに採用しにくくなるでしょうが。

 対して、細野元環境相の路線は、マイルドな保守層にも支持を広げて本格的な政権交代を実現する路線です。民主党内の世論に配慮して、細野氏はまずは民主党の再生ということを強調しています。泥仕合となってしまった維新との統合話について、言った言わないのごたごたの真相は不明ですが、野党再編についてより前向きであると考えていいでしょう。

 この路線をとった場合、リベラルから保守までを包含した旗印を掲げる必要が出てくるので、政策的には、民主党が従来から有している難しさを抱え込むことになります。だからこそ、細野氏は、党運営の変革を強調しているのでしょう。この路線が政権交代の迫力を持つためには維新との統合か、あるいは、より緊密な協力関係が不可避でしょうから、その点からも複雑性が増すことになります。

 野党再編のポイントは、自民党との違いを出すためにどのような政策に焦点を当てるかです。細野氏の公約を見る限り、自立分散型国家≒地方分権というような方向ですので、維新と協力できる可能性はありそうです。統治機構の改革は、大阪における展開を見ても、確かに自民党と大きな違いが出せる可能性がある領域です。国家観や外交・安全保障についてはどうしても相容れないでしょう。だからこそ、公約の一番に掲げている経済政策の部分で、何とか折り合いをつけ、自民党との違いを出すしかありません。

 細野氏は、自民党の経済政策をトリクルダウン経済の発想に基づいているとした上で、ボトムアップ経済ということをおっしゃっています。残念ながら、細野氏が掲げる政策は、すべて分配に関わる点であり、マクロ経済の視点も、グローバル競争の現実を踏まえていません。しかし、マイルドな保守層を取り込みたいのであれば、日本経済の競争力について語らねばならないし、マクロ経済について語らねばなりません。そもそも、政権交代を現実の視野に入れる政党が分配政策以外の経済政策を持たないというのは異常です。まずは、この感覚を持っていただきたいものです。

 最後に重要な点について触れます。民主党は、リベラルな支持層を土台とした政党であり、リベラルの理念を下ろすべきではないと思います。根本のところの存在意義まで失うべきではないでしょう。リベラルな理念を持ち続けることと、現実的な政策を採用することは矛盾するものではありません。先進諸国で政権を担うリベラル系政党の存在はその何よりの証拠です。現実路線に転換すべき最重要領域は経済政策です。

 思えば、日本型経営の躍進を支えた企業別組合は、正社員の保護に過剰にこだわって弱体化したけれど、資本主義経済の競争的側面に盲目ではありませんでした。だからこそ、日本企業はグローバルな競争力と、従業員の一定の福祉や平等をバランスしてこられたのです。民主党が、リベラル票、組合票に加えて、マイルドな保守票を積みまして再び政権交代を目指すのであれば、現実的な経済政策の提示からはじめねばならないでしょう。新代表には、まず、その点に取り組んで頂きたい。

 

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